ビデオ監的スコープ実験

20040624 「い」

 6月20日の茨城県営ライフル射撃場での試合の時に、各種システムの組み合わせでビデオ像を録画してきました。ただし、当日は朝から晴れていて、陽炎が多く(seeing極悪)観測コンディションとしては良くありませんでした。画像はその分割り引いて見てください。実験17で陽炎の状態をビデオクリップにしてあります。約2Mbyteありますが、回線の太い方はどうぞ。

ビデオ画像の計算機への取り込みは、LogitecのLVC-MG1/UというUSB経由のビデオキャプチャーケーブルを用いて、バイオノートに録画しました。320×240のカラー動画を録画できます。

結果・考察:FS-60Cでは焦点距離5000mmまでは十分実用的ですが、8000mmを越える(実験6)と非実用的です。得られる像が悪いだけではなく、暗くなるためにカメラの感度をめいっぱいboostするために、コントラストもよくありません。

FS-78ではFS-60Cよりずっとコントラストの良い像が得られます。ビデオ像を静止画にして並べてしまうと差は少なく感じますが、実際には標的への光の当たり具合、標的の背側面の明るさ、色(要するに標的に開いた穴から見える景色)などによって得られる像はまったく異なってきます。特に、夕方近くの薄暗い状況や、標的の背側面が暗かったりすると、著しく着弾を確認しずらくなります。FS-78ですとその辺でオールマイティーと言えます。

アイピースは同じ焦点距離の物がなかったので、直接の比較はしにくいのですが、写真撮影用のPJ20と眼視用のLE24ではあきらかにPJ20の方がビデオ像は良いようです。実験9の像と実験13の像を比べると明らかです。

システムとしては、50mでのみ使用ならば、TCA-4(拡大撮影アダプター)にPJ20の組み合わせで良いでしょう。PJ20は写真撮影用のアイピースですが、ビデオカメラ故障時には眼視でも十分使えます。ただし、正立アダプターを調達しておいた方がいいでしょう。ビデオ監的スコープにすると細かい荷物が増えるので、ACアダプターなどいろいろな物を忘れて、せっかくのシステムが時々粗大ゴミに成り下がります。そういうときに重宝します。(経験者談)

表の中の「観測焦点距離」はビデオ像の大きさから逆算した焦点距離です。TCA-4を用いた拡大撮影の際の拡大率(焦点距離)はアイピースとCCDとの間の距離に大きく左右されますし、また、エクステンダーレンズを用いた場合はエクステンダーレンズとアイピースとの間の距離によっても大きく異なってきます。このため、これらをなかなか正確に測定できませんし、アイピースが異なると主点の位置が異なりますので、アイピースの焦点距離とおりの拡大率(焦点距離)にはなりません。

結論:おそらく、SBで普通のコンディションならFS-60Cのシステムでまったく十分。笠間の150m(暗いです)、長瀞の300m(さすがに遠いし、暗いことが多い)ではFS-60Cではまったく不足で、エクステンダーレンズを加えたFS-78が必要、長瀞の300mで設置のモニターを越える像にするにはFS-102が必要と推定。

鏡 筒 エクステンダ
レンズ使用
エンクステンダ
チューブの数
接眼レンズ TCA延長
の有無
観測
焦点距離
画 像
FS-60C なし 0 PJ20 なし 1620mm
FS-60C なし 0 PJ20 あり 2230mm
FS-60C あり 0 PJ20 なし 2970mm
FS-60C あり 0 PJ20 あり 4230mm
FS-60C あり 2 PJ20 あり 4850mm
FS-60C あり 2 LE12.5 あり 8280mm
FS-78 あり 0 PJ20 あり 6410mm
FS-78 あり 0 PJ20 なし 4690mm
FS-78 あり 0 PJ20 あり 6460mm
10 FS-78 あり 0 LE12.5 なし 9360mm
11 FS-78 あり 0 LE12.5 あり 12600mm
12 FS-78 あり 0 LE24 なし 3210mm
13 FS-78 あり 0 LE24 あり 4970mm
14 FS-78 あり 0 PJ20 なし 4650mm 着弾
ビデオ像
15 FS-78 あり 0 PJ20 あり 6490mm
16 FS-78 あり 3 PJ20 なし 8600mm
17 FS-78 あり 3 PJ20 あり 11500mm

追加考察:ごしょごしょやっていると、本当にこれで良いのか不安になります。望遠鏡の分解能は、何(点を?平行線を?)を分解するかによっても異なり、簡単には表現しにくいのですが、イギリスのドーズによる6等星どうしを用いた分解能の研究によれば、分解能の観測値はレンズの口径をφmmとしたときに115.8"/φだそうです。

ということは、FS-60Cの60mmのレンズでは1.93"離れた2点を分解することができる。そして、50m先の1"は約0.24mmですので、FS-60Cの60mmのレンズでは50m先の、約0.5mm離れた2点を見分けられそうです。平行線の場合はこれよりずっと分解能が良くなるのが普通ですから、0.25mmしかないSB標的の圏的線(ライフル射撃標的の規格参照)を十分見分けられるのでしょう。

あとは、CCDとビデオデジタイザーの分解能がそれに見合っている必要がありましょうね。たぶんビクセンのB05-3M とLogitecのLVC-MG1/Uの組み合わせでは、悪くても水平解像度300本相当程度はあるのではないかと期待しています。ということは、FS-60Cを使っているときは、光学解像度が撮像系の能力に見合っているのは横幅15cm位を写しているときなんですね。実験で言うと2番目くらい。ふーん。結局いつも使っているあたりなんだ。なっとく。これ以上の拡大は液晶モニターを虫眼鏡で拡大しているのと同じですかね。

文責・著作 「い」

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